2013年11月28日木曜日

スポーツ選手の減量について

前回の記事でご紹介した、
「スポーツと栄養:強くなるために「何」を「いつ」「どれくらい」食べたらいいの?」
にて質問をいただきました。

『試合出場に減量が必要です。体重計測は試合当日に行います。当日は何を食べたらいいですか?』

質問は、何を食べたらいいか?ですが、まず減量の基本をお話しします。

減量に一番大切なことは、競技力を保ちながら体重を減らす事です。
競技力を保つというのは、脂肪を落とし、徐脂肪体重はなるべく維持するということです。
身体の余計なものをそぎ落とし、勝てる身体にする。
それが減量の本来の目的です。

無理な減量を行い、なんとか目標体重まで落とし、試合に出場したけれど、ふらふらでとても試合に勝てる状態ではなかった、なんてことも残念ながら良く聞く話です。

まず、体脂肪率を正しく測定して、自分の身体では何キロの減量が可能なのかを知るべきです。
先日、柔道部の部員で、試合前に4kg減量しなければいけない、いつも苦労するという部員がいました。
体脂肪率は6%、体脂肪量は4kgでした。目標に無理がありますね。
「せっかく練習で培ってきた筋肉を減らしてでも下の階級で戦うことが有利なのか、ビルドアップして上の階級に出場するという選択肢はないのか」

競技と減量の優先順位を間違えないようにしましょう。

でも、身長やリーチなど体格の問題、戦術や部内での階級分けなど、どうしても減量しなくてはならない事情もあるようです。

減量が必要な場合、目標体重が決まったら、減量スケジュールは余裕をもって開始しましょう。
一週間で落とす体重は1kgを限度とし、水分制限での減量は、計測の前日まで控え、1kgまでに押さえたいところです。
と考えると、4kg減量するためには、少なくとも3週間かけることになります。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、
減量期間に適した食事、試合(計量)当日の食事として、
公認スポーツ栄養士の橋本先生にご提案いただきました。

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理論上は減量期間を設けてエネルギー摂取量を減らしていけば体重は減るのですが、

「サラダだけ」と言った極端な食事制限をしていたのでは、パフォーマンスにも悪影響を及ぼしてしまいます。

ただ、おにぎり1個(50g)よりもチョコレート1枚やポテチの方が軽い(重量)イメージがあるので、
重量の軽そうな食品を選ぶといった考え方は間違っています。

「栄養密度の高い食品を選びつつエネルギー摂取量を減らす」ことを心掛けることが減量ポイントではないかと思います。
じゃ~何を食べればいいの?ということになりますが、

試合当日:腹もちの良い主食、果物、適量の水分(本来は制限したくないのですが、ほとんど飲まないと思いますので)を組み合わせて摂るのが良いのではないでしょうか。

おにぎり(胚芽米、雑穀を少し混ぜて炊く)、胚芽パンサンド(カテージチーズ、ボンレスハム/ピーナッツバター+はちみつ)、バナナケーキなど

※雑穀や、ピーナッツ、バナナケーキはGIが低く、じわじわとエネルギーに変わります。カテージチーズとボンレスハムは低脂肪なので消化に良くエネルギーも抑えられます。

りんご、洋ナシ、グレープフルーツ(低GI)>バナナ、オレンジ、キウイ(中等度GI)

低脂肪牛乳、りんごジュース、グレープフルーツジュース、野菜
ジュース、水、お茶など

日常の食事:基本的には、主食、主菜、副菜を揃えつつ、脂質(エネルギー)を抑える。

その代り、脂質の少ない良質のたんぱく源と野菜、芋類、きのこ、海藻、果物を積極的に摂り、主食も適量摂ることを心掛ける。

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いかがでしょうか?参考にしてください。
とはいえ、アスリートの減量は、プロが指導しても難しいのです。
体脂肪率測定含め、スポ研に相談に来て下さい。

スポーツと栄養:強くなるために「何」を「いつ」「どれくらい食べたらいいの?」開催報告


10月30日(水)

スポーツ医学研究センターの研究員でもある、公認スポーツ栄養士 橋本玲子先生を講師にお迎えし、

【強くなるためのスポーツ医学基礎講座】
スポーツと栄養:強くなるために「何」を「いつ」「どれくらい食べたらいいの?」が行われました。

【内容】
○あなたに合ったエネルギー必要量を把握しよう
○トレーニングに合わせた朝食・昼食・補食・夕食の配分
○コンビニ・外食でのメニュー選び
○試合に合わせた食事計画
○アスリートにとって朝食が大切なわけ


私達からの要望が多かったため、1時間と短い時間で、内容盛りだくさんながら、スポーツ栄養の基本を分かりやすくお話いただき、コンビニや外食で食べるなら何を選ぶかなど、具体例もあげていただきました。

私達が日頃から気にかけている、大学生アスリートの食事量、特に炭水化物(糖質)摂取の少なさについて、

「最近は、プロアスリートでも炭水化物が絶対的に不足している」というお話がありました。
体重70kgの男性選手の場合、1日の炭水化物の必要量の目安は、ご飯に換算すると「大きめお茶碗に5~6杯半」です。
「これくらい毎日食べている人〜」の問いに、手を挙げたのは、参加者30名弱のうち、2名でした。
体重が増えない、前日の練習の疲れがとれないなど感じている選手は、まずご飯やパンなどの炭水化物をきちんと摂ることを心がけましょう。

講座の冒頭で橋本先生も仰っていましたが、
スポーツ栄養を1時間で講義し、理解することは無理です。

朝食をきちんと食べましょう。
外食では、定食を選ぶのがいいでしょう。
自分たちの食事量がいかに少ないかを自覚して、トレーニング量に見合った食事を摂りましょう。
など講座で学んだことをひとつでも実行して欲しいものです。

このFBでの話題が、最近はどうしても食事や栄養の話に偏ってしまうのは、スポーツの根底に栄養が切り離せないからです(本当は生きるうえでの根底なのですが)
大学での競技生活は、4年間、競技によっては3年ちょっとしかないですね。大きなケガをしてしまったりすると、1年間フィールドに立てないなんこともあるわけです。

テクニック向上のためのトレーニングにしても、身体づくりにしても、お手本になる教科書はあっても、それぞれの選手がさまざまな事を試みながら、自分にあったものを見つけ出すしかなく、4年間の短い間で結果を出すのは大変なことです。

私達が、「食事、食事」とうるさく言うのは、トレーニング方法やスケジュールなどは、部の方針や環境ですぐにはかえられなくても、食事を改善することは、自分の意識ですぐに実行できるからです。

毎日一生懸命に練習していても、思うような成果が上がらなかったり、ケガや病気をしやすいのは、食事に原因があるかもしれないと気づいてもらえたら嬉しいです。

この講座で「減量」について質問をいただきました。
後日、橋本先生にご返答いただきましたので、
次回の記事でアップしたいと思います。

2013年8月19日月曜日

格闘技選手に特に注意してほしい感染症:新型水虫菌について


最近、柔道、レスリングをする人たちの間でカビ(新型水虫)の病気がはやっています。

「トリコフィトン・トンズランス」という皮膚真菌症、いわゆるタムシの感染症で、欧米から2000年頃に日本に持ち込まれ、主に上記の格闘競技選手間での 集団感染が多く見られるようになりました。この菌は感染力が強く、一度感染すると治りにくいと言われています。ただ、最近になって、治療法も確立してきた ので、正しい知識を持って治療・予防すれば怖い病気ではありません!

水虫菌(白癬菌)はヒトのアカ、毛、爪の蛋白を食べて生存します。トリコフィトン・トンズランス菌に感染すると体部と頭部に症状がでます。
① 体部白癬…顔、首、上半身に1〜2cmのピンク色の斑ができる
② 頭部白癬…フケやかさぶたができる程度の軽い症状から、膿が出て脱毛を生じるものまである

集団感染の予防としては、
① 道場や自分の部屋は毎日よく掃除をしましょう。菌は毛やアカの中で半年間生存します。
② ユニフォームや道着はよく洗濯する。
③ 練習直後にシャワーをし、頭・体を石けんでよく洗いましょう。トリコフィトン・トンズランス菌の体内への侵入速度は速いので、練習後できるだけ早くに行ないましょう。
④ 部員同士でのモノの貸し借り(特に帽子やタオル等)はやめましょう。

試合中〜試合終了後、合宿中に全員で抗真菌剤入のシャンプー(フルフルシャンプー)を使用することで、かなり改善するようです。
また自分の皮膚に触れても安全な新型水虫の除菌・消臭スプレー(トンズRAQ)も売っています。

万が一症状が出てしまったら専門医に相談、治療して下さい。その際、「格闘技を行なっているので、新型水虫かどうか調べてほしい」と言いましょう。 症状が普通のタムシと違い、誤診されやすく、ステロイド剤を処方されると重症化してしまします。きちんと治療しましょう。

インターネットでは、夏休みに格闘技をやっていた従兄弟宅の畳から感染した女子中学生の症例や、数年前まで柔道をやっていたお母さんから、10ヶ月の赤 ちゃんに感染した例も見られました。特に10ヶ月の赤ちゃんは脱毛が認められ、治療も飲み薬が使えないので治りが悪く、塗り薬で経過をみているようです。
症状が軽いので無自覚な選手も多いのですが、家族、恋人等の大切な人を守るためにも、感染を拡大しないよう、努めましょう!!

2013年7月11日木曜日

強くなるためのスポーツ医学基礎講座 下肢のケガ予防

2013年7月3日
強くなるためのスポーツ医学基礎講座

『下肢のケガ予防
トレーニング法やストレッチ、テーピング体験で現場のこまったを解決しよう


を開催しました。
講師はスポーツ医学研究センター研究員 理学療法士 今井 丈先生です。
 










下肢の機能やケガ予防のためのトレーニング、起きてしまった時の対処。
靴の選び方なども学びました。

今回は事前に『何を知りたいか、実習したいか』を募集しました。
講義の後、下肢のトレーニングとして代表的なスクワットなどを実際におこない
問題点などを討論しました。


次回は9月25日(水)
実践!ねんざ予防筋力アッププログラム、整形外科医による下肢障害相談
講師はスポーツ医学研究センター 准教授橋本健史先生です。